強者の論理について

大河ドラマ花の乱』(1994年)・第23回「密命」より

畠山義就「三郎、ここがどこだか分かるか?」
伊吹三郎「右衛門佐殿(畠山義就)の陣屋と心得まするが?」
畠山義就「たしかにわしの陣屋だが、つい先ごろまでは上皇様がお住まいあそばされていた仙洞御所だぞ。
  そしてここには上皇様がお座りあそばされていた。今その席にわしがあぐらをかいて座っているのだ。
  お主が公家の領主に忠義を尽くしたとて、それには何の意味もない。
  それもこれもこの度の大乱(応仁の乱)のおかげだ。
  分かるか? 元をたどれば次期将軍の跡目をめぐって御所様(足利義政)と御台様(日野富子)、
  細川右京太夫殿(細川勝元)と山名宗全入道殿の確執によって引き起こされたものだが、
  肝心なことは、この大乱を契機として、人の世の全ての価値を変えてしまうことだ。
  絶対であったものを覆し、真に力のある者どうしがしのぎを削って天下を取りあう。
  古き殻を破って、新しい力の時代に導く、そのための破壊、そのための戦だ。」
伊吹三郎「いかにも勇猛をもって聞こえるお方の頼もしきお言葉。
  ただそのぶん、家を焼かれ田畑を踏み荒らされ、兵糧を搾取され、夫役に駆り出される、
  抗う武器も持ち合わせぬ民人たちのことは、まるで眼中に無きがごときお言葉とも受け止めまする。


畠山義就「話はまだ終わっていない。
  わしがあえて公方様(足利義政)の意向をないがしろにして、
  勝手に山城の国の守護を名乗った理由は二つある。
  一つは、今の幕府の名ばかりの権威の衣を引きはがし、
  公方様の無力を諸国の守護に知らしめること。
  いま一つは、畠山政長の武力侵攻から山城の国を守ることだ。
  椿の荘を政長の馬蹄の下に蹂躙されたくなかったら、
  伊吹三郎、今ここでわしの被官(家来)になれ。
  わしの被官になるよりほかに椿の荘を守る手立ては無いはずだ。」
伊吹三郎「一つ目のことは信じましょう。
  しかし二つ目のことは、断じて承服いたしかねまする。
  まずもって、かかる大乱を引き起こしたのも、将軍継承をめぐるいさかいの他に、
  こなた様と政長殿との長きにわたる領地争いが元凶にござる。
  その元凶の一方の主が山城の国に陣取られましては、もう一方のお方が黙っておられるはずがない。
  都を灰燼に帰した同じ大乱が、今度は山城の国で起こることになる。
  われら山城の国人にとっては、迷惑千万な話だ。
  ましてやどちらかの被官となって、かかる無益な争いごとに加担するなど、
  まっぴらご免こうむりたく存じまする。」


コミック版『Fate/EXTRA』・第13話「理想郷 / utopia」(第3巻収録)より

遠坂「私、見ての通り肉食なの。農場(ファーム)暮らしは性に合わない。」
レオ「ミス遠坂、それはあなたの強さがあってこその生き方です。
  生きるための戦いを肯定するのもいいでしょう。
  ですが、あなたはすべての人間に自分と同じ強さを求められますか?

遠坂「それはー」
レオ「できませんね?
  あなたは自分の身勝手さも傲慢さもわかっています。
  だからこそ、その苦しみを共有できないすべての力なき人々に
  自分と同じ苦悩を負えと強制できない。」