ある人が言った。「私は病弱で才能もなく学道に耐えられません」
道元禅師は言われた。「いにしえの聖人たちがみな強靭な肉体と特別の才能を持っていたわけではない。ただ、自分には才能がないと卑下して努力しない人はいなかった。この世で学道修行しなければ、いつの世に才能と健康に恵まれた者に生まれ変われるというのか？」
『正法眼蔵随聞記』より意訳。『正法眼蔵随聞記』は道元の教えを弟子の懐奘がまとめたもの。道元自身の主著『正法眼蔵』がめちゃくちゃ難解で哲学的なのに対し、『正法眼蔵随聞記』は求道者の心得が力強い言葉で説かれている。厳しく叱咤激励してほしい人向けの書。
煩悩まみれの私たちは、どうあがいても苦しみから抜け出せないのをあわれんで阿弥陀様が起こされた慈悲の心は、落ちこぼれを救うためなんだから、救いを求めるダメ人間こそがいちばん浄土に生まれ変わる資格があるんだ。
『歎異抄』より意訳。『歎異抄』は親鸞の教えを弟子の唯円が記したものとされる。親鸞自身の主著『教行信証』がオフィシャルな教義を語っているのに対し、『歎異抄』は赤裸々でラディカルな声を伝えている。絶望の果てに見出した歓喜とでも言おうか。挫折を知らない人にはピンと来ないかもしれない。
