春の雪

『春の雪』ようやく一通り読了。
以下、ネタバレ注意。
なんというかメインのストーリーは実に不毛。というか、清顕がダメダメなだけ。
幼馴染で淡い恋心を寄せ合う清顕と聡子。その聡子に縁談が持ち上がったというのに、

「何も異存はありません。僕には何の関係もないことじゃありませんか
「まあ、今なら引き返せるのだ。だからして、もしもだ、もしも仮りに、少しでもお前の気持に引っ掛かりがあるなら、そう言ってごらん」
何も引っかかりなんかありません

と、ダメダメぶりを発揮する清顕。この段階でちゃんと意思を表明していれば、二人がハッピーエンドを迎えることも難しくなかったのに。(侯爵家の清顕と伯爵家の聡子なら当時的にも無問題なカップルだろうに)
こうして、清顕がクールガイぶってる間に聡子と洞院宮の王子との縁談が決まる。皇族の結婚なので、勅許がでる。(天皇のお命じで許可される。) もう引き返せない。(勅許じゃなくてもふつう引き返せないけどね。でも勅許を破るってことは国家に対する反逆だから。) もう引き返せないというときになって

……高いラッパの響きのようなものが、清顕の心に湧きのぼった。
「僕は聡子に恋している」

↑あんたアホやろ。
そして清顕と聡子は倫ならぬ逢瀬を重ね、聡子はついに妊娠する。(えらいこっちゃ。国家反逆罪やで!)
慌てて事態を取り繕おうとする、侯爵家と伯爵家だが、中絶した聡子は奈良の尼門跡 月修寺で剃髪し、出家してしまう。宮家との縁組は当然破談となり、スキャンダルになる。この間、事態を傍観するだけのダメダメな清顕。
そして清顕はこの期に及んで聡子に会おうとして、寒いなか何度もしつこく寺を訪ね、そのたびに門前払いをくらい、しまいに肺炎になって死んじゃう。おしまい。

なんだそりゃ?

じつに自閉的で不毛なストーリーだ。考えてみると気の毒なのは洞院宮治典王殿下。このかたは何も悪くないのに、とつぜん婚約者に出家されて、婚約破棄せざるをえなくなって、スキャンダルの中心人物にされてしまった。別に清顕と三角関係のもつれがあったわけでもなんでもないのに。
映画では洞院宮治典王殿下を演じるのはミッチー。をいをい。何も考えてないキャスティングだなあ。洞院宮治典王殿下→王子→ミッチー ってだけできめたんだろ。

洞院宮第三王子治典王殿下は、御歳二十五歳で、近衛騎兵大尉に昇進されたばかりであったが、英邁にして豪宕な御気性で、父宮のもっとも嘱望されている御子であった。

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