ウ/ン/ム と ク/ツ/フ

漢詩の音韻理論をみると、昔の中国人は漢語の語末子音の鼻音と破裂音の対応関係(-ngと-k,-nと-t,-mと-p)をちゃんと自覚していたようだ。

鼻音 破裂音
軟口蓋音
ng
k
歯茎音
n
t
両唇音
m
p


【例】
陽(yang)と薬(yak)
元(ngian)と月(ngiat)
厳(ngam)と業(ngap)


日本では、-ng は -ウないし-イ、-n は -ン、-m は -ム、-k は -クないし-キ、-t は -ツないし-チ、-p は -フ と写され、やがて-ムは-ンに合流し、-フは消滅した。
【例】
陽:yang→ヤ→ヨー
薬:yak→ヤ
元:ngian→ゲ
月:ngiat→ゲ
厳:ngam→ゲ→ゲ
業:ngap→ゲ→ギョー


いっぽう中国でも -m は -n に合流し、また -k, -t, -p はみな消滅した。
【例】
陽:yang→yang
薬:yak→yao
元:ngian→yuan
月:ngiat→yue
厳:ngam→yan
業:ngap→ye


もっとも、中国でも広東語などでは現代でも -ng,-n,-m,-k,-t,-p が全て残っているようだが。