言葉と歴史

メモ:ヨハネ伝

特徴 四福音書のなかで最後に成立。(推定) 他の3つの福音書とは構成も内容も大きく異なる。 具体的な話よりも神学的な話が多く、謎めいた文章で分かりにくい。 非ユダヤの立場で書かれており、反ユダヤ的で、ユダヤ人への敵意が強い。 イエスを「神の子」と…

メモ:ルカ伝

特徴 洗練された豊かなギリシャ語で書かれており歴史書風味。 (唯一、異邦人が書いた福音書) イエスの出生や前半生については作り話だが、マタイ伝とも異なる内容。 マルコ伝の内容の大部分を含み、それ以外にマタイ伝と共通する部分もあるが、独自の内容も…

メモ:マタイ伝

特徴 旧約聖書の予言の成就を強調している。もっともユダヤ色が強い。 イエスの出生や前半生については作り話。 マルコ伝の内容の大部分を含み、それ以外にルカ伝と共通する部分がある。 話の順番はマルコ伝とおおむね同じ。 キリストを「ユダヤの王」として…

メモ:マルコ伝

特徴 四福音書のなかで最初に成立。(推定) 内容が短く簡潔で異邦人向け。大部分がマタイ伝・ルカ伝と共通する内容。 イエスの出生や前半生については何も語らない。 イエスの復活についても多く語らなかった。(のちに加筆される。) イエスを「神の僕」として…

だって日本人の倫理に神様なんか必要ないもん

ドストエフスキーという人は予言者かもしれない。20世紀のロシア革命とその後の歴史を予見していたかのように思える。けれどもキリスト教徒でない僕にはいま一つピンと来ないところがある。ドストエフスキーって「もしも神様が存在しないのなら善も悪も無い…

のび太郎のこと

要旨 神話とか聖書とかって、結局こういうことなんだろうと思う。 あるいは古代史も。 「正史」から抹消された「のび太郎」 雑誌連載時、『ドラえもん』とは独立して『ドラミちゃん』という作品があった。 のび太郎は、のび太と瓜二つの親戚で『ドラミちゃん…

『出口なし』より

L'enfer, c'est les autres. (地獄とは他人のことだ。) 邦訳の『出口なし』は、英語訳 No Exit からの訳か。フランス語原題 Huis Clos は「密室」を意味する。

『論理哲学論考』より

6.52 Wir fühlen, dass selbst, wenn alle möglichen wissenschaftlichen Fragen beantwortet sind, unsere Lebensprobleme noch gar nicht berührt sind. Freilich bleibt dann eben keine Frage mehr; und eben dies ist die Antwort.6.521 Die Lösung des…

「中国語には主母音が2つしかない」説とそれに対する私見

「中国語には主母音が2つしかない」という面白い説を知ったので簡単にまとめて、それに対する私見を述べる。 前提 ここでいう「中国語」とは現代中国語の標準語である「普通話」を指す。中国語には多くの方言があるが、日本の中国語学習者が学ぶ「中国語」は…

土地支配の変遷まとめ (古代~近世)

古代の律令国家から近世の幕藩体制へと数百年かけて社会が組み換わっていく中世の歴史は複雑怪奇。 とくに鎌倉時代はカオスすぎる。 飛鳥時代後期~奈良時代前期 奈良時代後期 平安時代 平安時代末期 鎌倉時代 室町時代 戦国時代 安土桃山時代 江戸時代

上代特殊仮名遣

カ行の例 き (甲) 語例:ゆき(snow)、きみ(you)、あき(autumn)、とき(time) 万葉仮名:支、岐、伎、吉、棄、枳 き (乙) 語例:つき(moon)、きり(fog)、き(tree)、きし(shore) 万葉仮名:帰、紀、記、奇、基、幾 け (甲) 語例:けさ(this morning)、さけぶ(cr…

英独仏の be と have を比較

beに相当する動詞の人称変化 haveに相当する動詞の人称変化 所感 英語は人称変化がほとんど消滅したので面倒が少ない。(三単現だけしぶとく残っている) ドイツ語は人称変化が残ってるので面倒だが、まあ分かる。 フランス語はどうしてこうなった? have と a…

古英語

これは千年ほど前の古英語で書かれた文章です。いわば英語の古文ですが、さっぱり読めません。たぶん英語ネイティブでも読めないと思いますし、そもそもこれを英語だと思えるんでしょうか? Fæder ure þu þe eart on heofonum, si þin nama gehalgod. To bec…

「主の祈り」のラテン語

ヤハウェとか大嫌いな仏教徒が「主の祈り」のラテン語を読解した。Oratio Dominica (Pater Noster) 祈り-主の(女単主)Pater noster, qui es in caelis, 父よ-我らの(男単呼), who are(二単現) に-天(中複奪) 天にいる我らの父よ、sanctificetur nomen tuum. …

英語の「不規則変化動詞」の歴史 (アプラウトとウムラウト)

英語のいわゆる「不規則変化動詞」は、不規則といいながら実はいくつかのパターンがある、というのは中学生のころに誰しも気づくことだと思います。いまネットで検索しても、不規則変化動詞のパターンについて解説している語学系のコンテンツがいくつも見つ…

ティラノサウルスとマハラジャ

ラテンもゲルマンもヒンディーもみな兄弟。同じインド・ヨーロッパ語族に属する言語です。ラテン語で「王」を意味する rex も、サンスクリット語で「王」を意味する rāja も語源は同じ。ゲルマン系の人名に含まれる ric も同じ語源です。ゲルマン系の人名に…

「コウ」と読む漢字

以前に書いたネタ↓についての詳しく調査し直しました。 「コウ」と読む漢字が多い理由 - 滴了庵日録 古代中国語では全て異なる発音だった46個の漢字が現代日本語では同じ発音になっている例です。 (極端な例で恣意的なチョイスではありますが。) (PDF版はこ…

メモ:ビザンツ史

ビザンツ帝国の領土の変遷 ローマ帝国の東半分(395-533頃) 地中海の覇者(533-698頃) 地中海北東の強国(698-1071頃) バルカンとアナトリアの国(1071頃-1204) エーゲ海の小国(1204-1453) 五大総主教座 395年の帝国東西分裂の時点では五大総主教座のうちローマ…

ギリシャ正教1ミリも知らない仏教徒が「アグニ・パルセネ」を和訳してみた

ギリシャ語の聖歌「アグニ・パルセネ」を和訳してみた。先入観を抱かないようになるべく英訳は見ずに難解な箇所のみ参考にした。(そもそもWikipediaにある英訳はぜんぜん原文に忠実でない気がする。) 訳 Αγνή Παρθένε Δέσποινα, Άχραντε Θεοτόκε, 純潔の乙女…

日本語の「ん」には何種類の発音があるか?

日本語の「ん」にはじつは何種類もの発音があり、無意識に使い分けています。というより、発音しやすいように自然に発音が変化します。 [n] : 歯茎鼻音 タ行、ダ行、ナ行、ザ行、ラ行に続く場合 舌の先が上あごの前歯の歯ぐきに触れる 例: 安泰(アンタイ)、…

西のローマ、東のギリシャ

地中海の西部でローマとカルタゴがポエニ戦争を戦っていたころ、東部にはアレクサンドロス大王の後継者たちが建てたギリシャ系王朝(アンティゴノス朝、セレウコス朝、プトレマイオス朝)が割拠していた。いわゆるヘレニズム三国だけど、どういうわけかヘレニ…

言語学ネタ (印欧語族の古代語)

性・数・格の一致 インド・ヨーロッパ語族に広くみられる「性・数・格の一致」というのは、乱暴に言うと「韻を踏む」ことだと思ってる。例えば、古代ギリシャ語の例。 サンスクリット語と漢文 サンスクリット語の複雑怪奇な動詞の変化と比べると、漢文のなん…

ルーマニア国歌

Deșteaptă-te, române! (目覚めよ、ルーマニア人!) Deșteaptă-te, române, din somnul cel de moarte, În care te-adânciră barbarii de tirani Acum ori niciodată croiește-ți altă soarte, La care să se-nchine și cruzii tăi dușmani. 目覚めよ、ルーマ…

暗峠

生駒山の暗峠(くらがりとうげ)を登ってきました。上方古典落語「東の旅」でも語られる、江戸時代からの大坂-奈良ルートの要衝です。奈良県生駒市から山を越えて大阪府東大阪市に通じるこのルートは現在でも国道308号なのですが、「酷道」とも呼ばれる急勾配…

なつのロケット

飛ばなくていいなんて考えて作ったロケットが飛ぶもんか!! 要は結果だ! 俺は飛ぶようにしか作ってない!! あさりよしとお『なつのロケット』 そうだね。

「コウ」と読む漢字が多い理由

漢字には、音読みが同じもの(同音異字)が多数あります。たとえば、「吏・利・李・里・梨・理・裏・履・離」。これらの漢字はすべて、音読みが同じ「リ」です。漢字には必ず同音異字があると言ってもたぶん良いだろうと思います。 しかしその中でも、「コウ…

春・桜・霞

すこぶる季節はずれだけど、備忘のために記しておく。 春霞たなびく山の桜花 うつろはむとや色かはりゆく (古今) 春霞たなびく山の桜花 見れどもあかね君にもあるかな (古今) 山桜霞の間よりほのかにも 見てし人こそ恋しかりけれ (古今) 誰しかもとめて折り…

長谷寺

久しぶりに自転車で遠出してきました。斑鳩から桜井の長谷寺まで。往復でおよそ50kmの道程でした。 参道を登ると長谷寺の山門です。さすが真言宗豊山派総本山、りっぱな山門です。 門をくぐると回廊。長い回廊の石段を登っていきます。 回廊を登ると本堂です…

王寺の明神山

今日は王寺の明神山に登ってきました。大阪の柏原市との県境にある山で、遊歩道が整備されてるのでけっこうウォーキングしてる人たちがいました。 山頂はちょっとした展望台になっています。西を眺めると霞のむこうに大阪の高層ビルが見えます。写真では分か…

信貴山朝護孫子寺

20年ぶりに信貴山に登ってきました。 近鉄信貴山下駅からまっすぐに上る道を自転車を押して登っていきます。振り返ると王寺の町が見えます。 さらにどんどん登っていきます。振り返ると奈良盆地が一望できます。 そしてようやく辿り着いた信貴山朝護孫子寺の…