アクリルキーホルダーとアクリルスタンドを作ってみました。
テクノ図工部のイベントで、テイク・ラボさんの設備で加工させていただきました。
ぼくのやり方は我流なうえに昔風のワークフローなので、あまり参考にならないかも…
※ 当日、現場で分かったことですが、じつはこんな周到な用意をしなくても、その場でレーザー加工機とUVプリンタの専用ソフトでデータの加工ができちゃいます。もちろん、事前に準備したほうが作業がスムーズではありますが。
使用する道具
- 紙とシャーペン (ぼくにはフルデジタル作画は無理!)
- スキャナ (CanoScan LiDE 220)
- ペンタブレット (Wacom Intuos CTL-6100WL)
- GIMP
- SAI
- Inkscape
Illustratorが業界標準なのは分かってます。Illustrator形式でないと入稿できないことが多いのも承知してます。でもデザインは本業じゃないし、たまにしか使わないツールのためにアドビにお布施する財力がないんです。
下絵の取り込み (GIMP)
- ペンタブレットが苦手なので、下絵は紙にシャーペンで描きます。
- GIMPからスキャナーを起動し、下絵をスキャンして取り込みます。
- [画像]→[選択範囲で切り抜き], [キャンバスサイズの変更], [画像の拡大・縮小]などで適当にトリミングとリサイズをおこない、350dpi換算で実寸の2倍くらいのピクセル数にします。
- [色]→[トーンカーブ]でいい感じに白を飛ばします。
- [ファイル]→[エクスポート]でJPGファイルに出力します。
ペン入れ (SAI)
- 下絵のJPGファイルをSAIで開きます。
- [ペン入れレイヤーの新規作成] でペン入れレイヤーを作成します。
- ペン入れレイヤーで下絵をトレースします。ペンタブレットは苦手なので、[ペン入れ] ではなく [曲線] と [折線] を使ってマウスでポチポチと下絵をトレースし、[制御点] で微調整します。
一気にそれっぽいクオリティーの絵になりました。SAIはけっこう古いソフトですが、このペン入れツールが素晴らしいので今でも愛用しています。IllustratorやInkscapeのパスより直感的にコントロールしやすく、マンガ的な線画のトレースに向いていると思います。
線画の調整 (SAI)
実寸大に表示してみるとなんか頭が小さくてイケてない感じだったので、ミニキャラらしい頭身に調整します。
- [投げ縄] で頭を囲み、[選択]→[選択領域内の制御点を選択]、[レイヤー]→[自由変形]で頭を拡大します。
- 同様の手順で各部のバランスを調整し、崩れた線は [制御点] で修正します。
- [キャンバス]→[キャンバスの解像度変更]でリサイズします。350dpi換算で実寸の2倍のピクセル数になるように計算します。例えば 7cm なら 2 * 7 * 350 / 2.54 = 1929ピクセルです。
色塗り (SAI)
ベース色ごとにレイヤーを分けて色を塗ります。[バケツ]でベース色に塗りつぶしてから[筆]などで影やハイライトを付けます。ぼくはこの工程だけペンタブレットを使い、筆圧を利かせます。背景は透明のままにします。
また、前景を完全に不透明にするために、以下の手順で白で裏打ちします。
- [自動選択]で背景部分をすべて選択します。
- [選択]→[選択領域の反転] これで前景部分が選択されます。
- 最背面に裏打ち用のレイヤーを作成して、[バケツ]で選択領域を白く塗りつぶします。
SAIでの作業はこれで終わるのでPNGファイルに出力します。
リサイズ / カラー版と白版の作成 (GIMP)
白版のトレース / カットラインの作成 (Inkscape)
- Inkscapeでドキュメントを新規作成します。
- カットライン、カラー版、白版用に、cut, cymk, whiteの3つのレイヤーを作成します。
- cymkレイヤーにカラー版のPNG画像、whiteレイヤーに白版のPNG画像をインポートします。このとき画像DPIは [ファイルから] を選択します。インポートされた画像のサイズをmm単位の表示で確認します。
- カラー版の画像と白版の画像の位置を適当な座標にぴったり合わせます。
白版はカラー版より0.1mm内側に収縮させます。
- whiteレイヤーで白版の画像を選択し、[パス]→[ビットマップのトレース] でパスに変換します。
- 白版の画像はもう不要なので削除します。パスと画像が重なっていて選択しにくいので、[オブジェクト]→[オブジェクト]でオブジェクトのリストから選択して削除します。
- [編集]→[環境設定] の [振る舞い]→[変化量] で インセット/アウトセット量 を 0.1mmに設定します。
- [パス]→[インセット] で内側に収縮させます。
カットラインは逆にカラー版より2.5mm外側に膨張させます。
- 白版のパスをcutレイヤーにコピーし、位置をぴったり合わせます。
- コピーしたパスのフィル(塗りつぶし)を無しにして、線の色を赤 (FF0000) にします。
- [編集]→[環境設定] の [振る舞い]→[変化量] で インセット/アウトセット量 を 2.5mmに設定します。
- [パス]→[アウトセット] で外側に膨張させます。
- カットラインがなるべくなめらかになるようにパスを調整します。
- 線の太さを 0.01pt にします。残念なことに、Inkscapeではこのような細い線は見えなくなってしまいます。[表示]→[表示モード] を [アウトラインオーバーレイ] に設定すればパスのアウトラインを黒線で表示できますが、少し分かりにくいです。
カン / ツメ を付ける (Inkscape)
アクキーならカン、アクスタならツメを付けます。カンは外径8mm, 内径3mmとします。ツメの高さと台の穴の幅はアクリル板の厚さ(今回は3mm)に合わせます。
台の穴の幅がアクリル板の厚さピッタリだとレーザー加工の切りしろぶん穴が広がって緩くなるので、0.2mm程度?幅を狭くするのがよいそうです。狭すぎて嵌らないときはヤスリで削ります。
- フォントを使っている場合は、テキストを選択して [パス]→[オブジェクトをパスへ] でフォントをアウトライン化しておきます。
- SVG形式で保存します。
加工
設備によってやり方、使い方は多少異なると思います。今回はテイク・ラボさんのレーザー加工機 MIRA5 とUVプリンタ MUTOH XpertJet 461UFを使わせていただきました。基本的な流れをメモします。
- Inkscapeでカラー版、白版、カットラインのレイヤーのみをそれぞれ表示してPDF形式で保存します。
- レーザー加工機の専用ソフト(LightBurn)でカットラインのPDFを読み込み、アクリル板をカットします。このときアクリル板の紙は剥かないこと。このソフト上で画像からカットラインを作成することもできるそうです。
- UVプリンタの専用ソフトでカラー版のPDFを読み込み、左右反転(ミラー)させて、まず紙にカラー(CMYK)印刷します。
- アクリル板の紙を剥き、静電気防止クリーナーとキムワイプで拭いてから、さきほど印刷した紙の上に位置を合わせて裏返しで置きます。そして高さを再調整してアクリル板に印刷します。
- 続いて白版のPDFを読み込み、左右反転させて、色のあるピクセルに対しホワイト(W)で印刷します。ぼくは予め0.1mm削ったデータを作成しましたが、ソフト上で輪郭を削ることができます。
- 続いて白版のPDFを読み直し、左右反転させて、色のあるピクセルに対しバーニッシュ(V=透明)で印刷します。今度は逆にソフト上で少し輪郭を太らせます。
これで完成です。