惑星に負ける

この一週間、惑星に負けて欠勤しておりました。
「惑星に負ける」というのは僕の造語で、機械研OBのあいだでたまに用いられるローカル用語です。この言葉は明確に定義されずに微妙なニュアンスの幅で用いられてきましたが、ここであえて定義するなら、

惑星に負ける
不安、心配、後悔、過負荷、欲求不満、ストレスなどが引き金となって、ダメダメスパイラルに陥り、気力が低下し、通常業務(生産的活動)をこなせなくなること。

まあ、精神医学でいう「鬱」とほぼ同義で、じっさい僕も精神科の処方で抗鬱剤を服用しています。ただ、「惑星に負ける」という言葉には、独特のニュアンスが含まれています。



古代の人々は星の運行が人間や地上世界の運命を左右すると考えていました。そこで洋の東西を問わず、占星術という迷信が生まれました。
現代語にもその名残があります。英語で「災害」を意味する「disaster」の語源は、否定の接頭辞「dis-」+「星」を意味するラテン語「astrum」で「悪い星」という意味です。古代の人は自然災害を悪い星の影響と考えていたのでしょう。また、「熟考する」を意味する「consider」の語源は、「ともに」を意味する接頭辞「con-」+これまた「星」を意味するラテン語「sidus」で「星とともに」という意味です。古代の人は物事を考えるときには星と相談(占星術)していたのでしょう。
日本語でも「不幸の星の下に生まれた」とか「星のめぐりが悪い」とか言うことがあります。

「惑星に負ける」という言葉には上記のような「星の影響」を比喩的に用いた言葉です。惑星の運行のように、人間の力ではどうにもならない周期的なめぐりあわせがあり、めぐりあわせが悪いとその「惑星」の力に心が負けてしまうのです。これは精神論で克服できるものではありません。もう養生して「惑星」が去るのを待つしかありません。

それにしても、僕の知人のなかで、「惑星に負けた」ないしそれに近い状態にある/あった人が6、7人ほど。僕の交友関係のせまさを考えると、かなり高い率です。類は友を呼ぶというか、なんというか。