薔薇の名前

「薔薇は神の名づけたる名。汝の薔薇は名も無き薔薇。」
(ウンベルト・エーコ原作 映画 「薔薇の名前」 より)



「理想の薔薇は実在するか否か?」これは古代〜中世ヨーロッパの哲学者たちが大論争をした問題である。
「実在しないよ」派
地上に咲く薔薇は一輪一輪違った存在であり、それらをひっくるめて「薔薇」と名づけているに過ぎない。だから、「これぞ薔薇!」というような、100点満点の「理想の薔薇」は実在しない。
「実在するよ」派
天上の理想の世界には100点満点の「理想の薔薇」が実在する。地上に咲いている薔薇はどれも、天上の「理想の薔薇」の劣化コピーに過ぎない。

僕は昔は「実在するよ」派だったけど、今は「実在しないよ」派。 例えば、恋人を「女神さま」の劣化コピーとは考えたくない。人間は神様の劣化コピーではなく、一人一人違った存在。だから100点満点なんていうのは無意味。

余談だが僕の母校の中庭には、プラトンアリストテレス銅像がある。プラトンは「実在するよ」派の元祖で、アリストテレスは「実在しないよ」派の元祖。それを象徴するように、プラトンは天を指差し、アリストテレスは地を指差している。