まつろわぬもの

# Hさん 『大江山の鬼伝説は、朝廷の支配に従わない人々(=まつろわぬ民)が住んでいるのが、大江山以北だったことに起因しているそうです。丹後地方は完璧アウトです。』

丹後地方は大和朝廷以前からの先住民文明の勢力圏ですね。朝廷の支配に抵抗する、「まつろわぬもの」として、土蜘蛛とか海人とか言われてます。古くは「古事記」に、祟神天皇(神話では十代天皇、実際には3〜4世紀の大和の大王)の弟が大江山の土蜘蛛を征伐した、という記述があります。このころは大和朝廷の実効支配はまだ丹後には及んでなかったわけですね。
時がくだって、朝廷の支配がほぼ全国に及ぶようになっても、先住民の末裔は山岳を拠点に抵抗を続けます。有名な大江山の鬼・酒呑童子平安時代中期(藤原道長と同時代)の人(?)ですから、彼らのゲリラ戦は数百年にわたって続いたわけです。
しかし、酒呑童子も、朝廷の命を受けた源頼光のだまし討ちで殺されます。酒呑童子は頼光に言います。

情けなしとよ客僧達、偽りあらじといひつるに、鬼神に横道なきものを。
【訳】情けないことよ、君たちは。うそ偽りはないと言っておきながら、わたしをだまし討ちにするのか!? 鬼のわたしでさえ、こんな道に外れたことはしないのに! 

これに対し頼光は言います。

これは勅なれば、土も木も、わが大君の国なれば、いづくの鬼の、宿りなるらん。
【訳】これは天皇陛下のご命令だ。わが国は天皇陛下の国で、土も木も天皇陛下のものだから、お前たちのような鬼の住んでいい所はどこにもないのだ。

この頼光の言葉こそ、鬼退治(先住民征伐)を正当化するイデオロギーですね。



【参考文献】
馬場あき子 「鬼の研究」
大和岩雄  「鬼と天皇

そういえば、今日はじめて「ひぐらしのなく頃に」のアニメ見ました。萌えと伝奇ホラーの融合というかギャップがそこはかとなく怖い...