日本語の助動詞

日本語は英語に比べ、動詞の語尾変化が多様です。この語尾変化は主に、国文法で「助動詞」と呼ばれている拘束形態素によるものです。(英文法で「助動詞」と呼ばれるものとは全く別物です。英語の「助動詞」は自由形態素です。)
動詞「たべる」の過去形は「たべ-た」、その否定形は「たべ-なかっ-た」、その可能形は「たべ-られ-なかっ-た」、その使役形は「たべ-させ-られ-なかっ-た」。このように、日本語では、過去も否定も可能も使役も、すべて助動詞がになっています。

  • 過去:助動詞「た」
  • 否定:助動詞「ない」
  • 可能:助動詞「られる」
  • 使役:助動詞「させる」

いっぽう、英語はどうでしょうか? 動詞「eat」の過去形は「ate」、その否定形は「did not eat」、その可能形は「could not eat」、その使役形は「could not make 〜 eat」。

  • 過去:動詞または助動詞が過去形に語形変化
  • 否定:{代動詞「do」または助動詞}+副詞「not」+動詞
  • 可能:助動詞「can」+動詞
  • 使役:使役動詞「make」+動詞の原形不定

このように、になっている文法要素がバラバラです。日本語のほうが一貫性があるように思います。
ところで、日本語の助動詞では、使役「させる」、可能「られる」、否定「ない」、過去「た」は、必ずこの語順にならべなければなりません。また特定の助動詞に接続するときの活用形は決まっています。(例:「た」に接続するときは連用形)

例1
○ たべ-なかっ-た (「たべる」の未然形+「ない」の連用形+「た」の終止形)
× たべ-たろ-ない (「たべる」の連用形+「た」の未然形+「ない」の終止形)

例2
○ たべ-られ-ない (「たべる」の未然形+「られる」の未然形+「ない」の終止形)
× たべ-なかろ-られる(「たべる」の未然形+「ない」の未然形+「られる」の終止形)

例3
○ たべ-られ-た (「たべる」の未然形+「られる」の連用形+「た」の終止形)
× たべ-たろ-られる (「たべる」の連用形+「た」の未然形+「られる」の終止形)

なぜこのように助動詞に語順・活用形の規則があるのか、合理的な説明は思いつきません。しかし我々はこの語順・活用形を無意識的に正しく使っています。考えてみると不思議ですね。