「日本人のほとんどは、英語の r, l, th, v を正しく発音していない。」 これは誰でも知ってることです。では、「 f も正しく発音していない。」ということはご存知でしょうか?
日本人の多くは英語の f をファ行音(ファ、フィ、フ、フェ、フォ)で発音しています。しかし、英語の f と日本語のファ行音は異なる子音です。発音記号では英語の f は[f]、日本語のファ行音は[Φ]です。どう違うかは口を見れば明らかです。[f]は前歯で下唇を軽くかんで発音しますが、[Φ]は唇を前にすぼめて発音します。
てのひらを口の前にかざしてみましょう。[f]では、あまりてのひらに息があたりませんが、[Φ]では強く息があたります。耳で聴くと[f]のほうがやや乾いた感じの音になります。
もっとも、英語には[Φ]の音がないので、相手(英語ネイティブ)が丁寧に発音してくれるかぎり、[f]と[Φ]を聴き分ける必要はないかもしれません。また f を[Φ]で発音しても相手に誤解されることはないでしょう。「なんか訛ってるけど、f のつもりなんだろうな。」と思ってくれるはずです。r と l 、b と v のような深刻な問題ではないかもしれません。
しかし、ナチュラルスピードのリスニングとなると話はかわってきます。速いスピードのリスニングでは、自分が正しく発音できない音は聴き取れません。 f を[Φ]で発音しているかぎり、f を聴き損じる恐れがあるということです。(などと偉そうなことを言ってますが、僕も英語のリスニングは大の苦手です。)
まあ、しかし、[f]と[Φ]はとても似た音なので、[f]と[Φ]を区別して使うような言語は寡聞にして知りません。(僕が知らないだけでどこかにあるかもしれませんが。) そして、世界的にはどうも[Φ]より[f]のほうがメジャーなようです。
[f]のある言語
英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、その他ヨーロッパの多くの言語、中国語、アラビア語、トルコ語 など
[Φ]のある言語
日本語、アイヌ語、トルクメン語、スペイン語ホンジュラス方言、マオリ語、エウェ語、イテルメン語、カインガング語、マオ語、クワマ語、ヴェーダ語 など
[Φ]のある言語って、日本語以外はマイナーなのばっかり。まあ、ヴェーダ語は、かの『リグ・ヴェーダ』などバラモン教聖典に用いられている言語で、サンスクリット語よりも古い、とても重要な言語ですが。
いっぽう、[f]はメジャーな言語の多くにあります。ヨーロッパや南北アメリカで広く用いられる、ヨーロッパ系の諸言語。中東で広く用いられるアラビア語。世界最大の人口を誇る中国語。
国連の6つの公用語である、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語、アラビア語の全てにありますね。
なぜ、[f]はメジャーで[Φ]はマイナーなんでしょうね?
ちなみに韓国語には[f]も[Φ]もありません。彼らは英語の f を[p]で発音するので要注意。