4.日本語の発音(1)
第2回と第3回では、日本語と韓国語の類似点について述べた。しかし、日本語と韓国語には大きく異なる点がある。ひとつはもちろん文字表記だが、このエッセイでは文字表記についてはとりあえず考えない。もうひとつの相違点は発音である。
日本語の音節構造は非常のシンプルである。なにしろ「ん」を除けば、基本的には[0/1子音+1母音]の形の開音節しかなく、変則を無視すれば子音13、母音8(基本母音「あ」「い」「う」「え」「お」に拗音母音「や」「ゆ」「よ」を加える)で、全部で100種ぐらいしか音節の種類はない。数え方は人によって若干変わると思うが僕の数え方では下図のとおり、(13+1)×8-12+1=101種。
「ぢ」「づ」「ぢゃ」「ぢゅ」「ぢょ」「を」は、それぞれ「じ」「ず」「じゃ」「じゅ」「じょ」「お」と同じ音であるので、数に含めない。「シェ」「ジェ」「チェ」「ツァ」「ツィ」「ツェ」「ツォ」「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」「ウィ」「ウェ」「ウォ」など外来語用の音節を含めるともう少し増えるがここでは国語の音のみを数える。
音素の種類が子音13種、母音8種というのは、世界的に見て極端に少ないわけではないが、音節の種類が101種というのは非常に少ない。上に述べたように音節の構造が非常に単純で均一なためである。
これに対して韓国語の場合、音素の種類は子音19種、母音20種(基本母音8種、[j]拗音母音6種、[w]拗音母音5種、二重母音1種)で日本語より倍ほど多い程度であるが、音節の種類はおよそ2000種におよび、日本語より桁違いに多い。日本語より複雑な音節構造をもつからである。頭子音が18種、母音が20種、末子音(パッチム)が7種(p,t,k,m,n,ng,l)なので、単純計算で(18+1)×20×(7+1)=2660種になるが、実際には存在しない音があるので、それらを除くと約2000種となる。
ちなみに英語などヨーロッパの言語は子音が2つも3つも重なることがあるので、音節の種類はさらに増える。そもそも、英語で音節の種類を数え上げることなど無意味にすら感じる。たとえば「stlength」という単語などはこれで1音節である。けっして日本語よみのように「ス・ト・レ・ン・グ・ス」の6音節ではない。
以上のように、音節構造が単純で音節の種類が少ないのが日本語の特徴で、韓国語と大きく異なる点である。
次回は日本語と音節構造が似ている言語について述べる。