ダライ・ラマの「中論」講義

ダライ・ラマの「中論」講義』を読み始める。



猊下の言葉はとても平明なロジックで、力強く感じられる。信仰が論理と実証に反してはならないという考えは、まさに僕が科学技術と仏法の双方に身を置く中で第一に考えていることでもある。


本書は大乗仏教を理論的に確立したかのナーガールジュナの『中論』についての講義。ちょうど20年前、僕が初めて学んだ仏典は『般若心経』だったけど、『中論』は『般若心経』や『金剛般若経』をはじめとする般若経典に呼応する論書だ。般若経典が名も無き幾多の瞑想せる詩人たちの集成であるとするなら、『中論』はナーガールジュナという稀代の賢者がそれを論理的に裏付けたもの、かな。


チベット仏教いうとなんか神秘のイメージがあるけど、ツォンカパから現ダライ・ラマ猊下にいたるチベット仏教の主流はむしろ顕教重視のロジカルな宗派。日本にも奈良時代には南都六宗の一つに三論宗ていうのがあって『中論』とかを研究してたけど、あんまし振るわずに廃れちゃったのは残念に思う。まあ、般若の思想を受け継いでるのは日本では禅宗かな。禅はもう、ロジックとか飛び越えちゃってるけど(笑)