日本語の動詞と形容詞

この文章は10年前の1995年に書いたものです。古いノートを整理して見つけました。
日本語において、動詞と形容詞の区別はそれほど本質的でないように思える。周知のごとく、英語では文の述語となりうるのは動詞のみであり、叙述用法の形容詞は必ず"be"などの動詞を伴い、補語として働く。逆に原形で名詞を修飾しうるのは形容詞(限定用法)のみであり、動詞は不定詞や分詞(あるいはたまに動名詞)となってはじめて名詞を修飾できる。
ところが日本語の場合、動詞・形容詞において終止形と連体形は同形(古語においてはサ変、ラ変動詞や形容詞では異形となるが)であり、いま仮にこれを「原形」と呼ぶならば、動詞・形容詞はともに「原形」で文の述語となり、「原形」で名詞を修飾できる。つまり日本語における動詞と形容詞の区別は、意味(動詞は主に動作を、形容詞は主に状態を表す。)や活用形の違いであり、英語における動詞と形容詞の区別ほど文法上の違いはないのである。
加筆:ちなみに、アイヌ語には文法上の形容詞は存在せず、形容詞的意味をもつ動詞によって名詞を修飾するという。