中世の制度と宗教

中世、それは古代と近世という二つの秩序のはざまにあった混沌である。ユーラシアの東と西の端、日本と欧州に共通して中世という長い混沌の時代があったことは注目に値する。道元一休宗純、マイスター・エックハルトウィリアム・オッカムなどなど、混沌の中世を生きた思想家・宗教家というのは非常に面白い。わが国の中世初期である鎌倉時代に偉大な新仏教の開祖が多く輩出したのは偶然ではない。
わが国の中世は古代律令国家の崩壊から近世幕藩体制の成立までの長い過渡期である。日本全土を埋めていたはずの律令制国衙領が、まずは荘園という大土地所有によって蚕食され、そしてやがて国衙領や荘園に寄生した守護地頭が権限をしだいに拡大してこれを乗っ取り、一円領主としての大名に成長する。そして大名が割拠する戦国を制した徳川が、全国の大名を傘下に収める近世幕藩体制を確立した。
律令国家の原則に反した新興勢力が、律令国家を解体させつつ成長し、やがて幕藩体制の中に吸収されていく中世制度史。それは古代律令国家時代の鎮護国家のための旧仏教へのアンチテーゼとして興った新仏教が、やがて近世にいたり寺請制という幕藩体制秩序の中に取り込まれる中世宗教史と並行するように思う。