日本語の横顔(第2回)


2.日本語と韓国語(1) 文法

韓国語を少しでもかじったことのある方なら誰もが感じると思うが、日本語と韓国語は文法がとてもよく似ている。英語や中国語のようにガラリと頭を切り替える必要に迫られない。以下に、日本語と韓国語の文法の共通点を4つ挙げる



①補語+述語の語順: よく、日本語はSOVの語順とか言われるが、そうとは限らない。日本語ではSOVでもOSVでもいいのである。日本語ではOSVは別に倒置法ではない。そもそも日本語文法に「主語」「目的語」の概念は存在しない。日本語のSとOは「主格補語」「目的格補語」であって、どちらも「述語」Vにかかる「補語」という対等な位置関係にある。英文法の「主語」と「目的語」のような歴然とした文法上の扱いの差はない。これは韓国語でも同じである。日本語と韓国語の共通点のひとつはこの、「補語」+「述語」という語順である。

②助詞によって名詞の格が決まる: 日本語では、「が」が主格、「を」が目的格(対格)、「の」が属格、「へ」が与格、「から」が奪格というように、助詞が名詞の格を表す。韓国語にも同様の助詞が存在し、名詞の後についてその名詞の文中での格を示す。そのため、英語や中国語のような、格変化を持たず語順で格が決まってしまう言語に比べて、語順が比較的自由である。

③語尾変化によって動詞の意味が変化する: 日本語では、「〜ない」が否定、「〜た」が完了、「〜(よ)う」が意思、「〜ている」が継続相(進行形)、「〜ば」が仮定、というように語尾の変化によって動詞の意味が変化する。(学校で習うの国語文法でいうところの「活用語尾」、「助動詞」、「補助動詞」、「接続助詞」などをひっくるめてここでは「語尾」と呼ぶことにする。) 韓国語も同様の語尾変化を持つ。敬語の語尾を持つことも共通する。

④人称変化、名詞の性と数、冠詞などはない: これらが「ない」のが、日本語と韓国語の特徴というよりも、これらが「ある」のがヨーロッパ語の特徴といった方が正しい。英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、イタリア語といったヨーロッパ語を学ぶ機会の多い日本人は、どうしてもヨーロッパ語の文法を基準に考えてしまう癖があるが、はっきり言って、名詞の「性」などなんの普遍性もない。日本語、韓国語以外でも、たとえば中国語にもこれらの文法は存在しない。

簡単な例文を一つ。

(日)私は日本人です。

(韓)나는 일본인입니다.(ナヌン イルボニニムニダ.)

この文では

「私」 =「나(ナ)」
「は」 =「는(ヌン)」
「日本人」=「일본인(イルボニン)」
「です」 =「입니다(イムニダ)」
の関係にあり、完全に逐語的に対応しており語順も同じである。(もちろん全ての文でこううまくいくわけはないが。)

次回は、日本語と韓国語において漢字語が多く用いられるという点について述べる。