現代の日本語は、和語と漢語、かなと漢字の混ざった言葉ですが、これは先人の長い試行錯誤の末に確立されたものです。では和語とかなだけで作文するのと、漢語と漢字だけで作文するのと、どっちが簡単でしょう?
まなとからことばのみをもてふみをかくは、むしろやすし。かなとやまとことばのみをもてふみをかくは、いとかたし。そも、かみつよには、やまとことばをつづるにすべなく、まなをかりてこれをうつしき。くにのひともからことばをもてたふとしとなし、くにのことばをいやしめり。うたにても、すめらきのえらばせたまへるうた、からうたこそふるく、やまとうたをえらばせたまへるより、ももとせといそとせさきんず。かなといふもの、はじめはおんなでとぞよばる。ときに、みぎのおほいもうちぎみのくらゐにておはす、すがはらのおとど、からふみからうたをよくしたまふ。まつりごとにてもひいでておはし、だいごのみかどをたすけたまふも、まえつきみたちやすからずおぼしき。ひだりのおほいもうちぎみのくらゐにておはす、ときひらのおとど、つひにはかりて、すがはらのおとど、つくしのとほのみかどにながされたまふ。このおり、こちふかば、とよみたまへるやまとうた、よにいみじうきこへるも、よをさるにのぞみては、おなじううめのはなをからうたにてぞうたひたまひき。ときにあたかもからくにのみかどほろべるよとせまへなり。これよりくにのひとのこころばへ、くにめきてゆけり。だいごのみかど、みことのりしてやまとうたをあつめさせたまふ。すめらきのやまとうたをえらばせたまへるはじめなり。
以唯漢字漢語作文寧易、以唯和字和語作文甚難。夫、上代国無有文字、借用漢字。国人皆、以漢語為貴、以和語為賤。勅撰漢詩集先行百五十年於勅撰和歌集。国字、当初一名女字。時、右僕射菅道真公、能書漢詩文、通達政道、輔弼醍醐帝、群臣百僚恐之。左僕射藤時平公、謀略讒言、道真公左遷筑州大宰府。臨去京洛、題梅花和歌、人口膾炙、然道真公辞世、同題梅花漢詩。道真公没後四年、恰唐朝滅亡。爾来、国風文化興隆。醍醐帝、勅命編纂古今和歌集、是勅撰和歌集之嚆矢。
全く同じ内容の文章を作文してみましたが、漢字だけのほうが書きやすく読みやすいですね。
まあ、どっちも何の役にも立たないスキルですが。