エリツィンのリ



去年4月に逝去された、エリツィン前ロシア大統領は、英語表記だと「Yeltsin」になるそうです。この表記だと「イェルツィン」と読まれそうな気がします。ただ、「イェ」は、むしろこのほうが「エ」より原音に近いっぽいです。問題は「l」です。これでは「リ」と読めませんよね?


実は、「エリツィン」の「リ」は、母音[i]をともなった音ではなく、子音そのものが[i]に近い口の形になっているのです。これを子音の口蓋化といいます。ロシア語では口蓋化音と非口蓋化音の対立があり、別の子音として区別されます。「エリツィン」の「リ」は、「口蓋化したl」なのです。


口蓋化音と非口蓋化音の区別は、ロシア語をはじめとするスラヴ語派に共通して見られる特徴だそうです。
日本語にも実は口蓋化音があります。具体的に言うと、各行のイ段および拗音(ャ・ュ・ョ音)が口蓋化音です。例えば、カ行では{キ、キャ、キュ、キョ}が口蓋化音で、{カ、ク、ケ、コ}が非口蓋化音です。


他の言語では、スペイン語の「~つきのn」が口蓋化音ですね。なぜか「n」のみが口蓋化音と非口蓋化音を区別します。例としては「エスパーニャ」の「ニャ」が「口蓋化したn」です。
フランス語の「gn」も、スペイン語の「~つきのn」と同じ「口蓋化したn」なのかな? 「シャルルマーニュ」の「ニュ」とか、それっぽいです。


中国語は...すごくややこしい話になります。というか、僕もちゃんと理解できてません。清朝時代に/k/や/g/の口蓋化がひどく進んで、全く別の子音になってしまったようです。例えば、「机」は「キ」ではなく「チ」に近い発音になります。他にもいろいろややこしい話があって、中国語の音節表はすごく変則的です。

  • { b, p, m, d, t, n, l }には非口蓋化音も口蓋化音もある。
  • { g, k, h }には口蓋化音がない。口蓋化音は{ j, q, x }に変化した?
  • { f, zh, ch, sh, r, z, c, s } には口蓋化音がない。

かな?