僕は仏教徒ですよ?

昨日の日記でキリスト教の宗派の樹形図を描きましたが、念のために言っておくと僕は仏教徒です。じゃあ、仏教の宗派の樹形図を描いてみようかと思いましたが、これは無理っぽいです。仏教はあまりにも多様化しているため、一つの宗教としてとらえることすら困難です。キリスト教にもたくさんの宗派がありますが、それでも「イエス・キリストが伝えた神(ヤハウェ)の教え(それは聖書に書かれている)を信じる」という点で共通しています。では仏教の全ての宗派に共通するものってなんでしょうか?たとえば、

これらは日本でメジャーな仏教の宗派です。しかしこれらの共通点を見出すのは難しいです。まず経典が違います。キリスト教ではどの宗派も聖書を経典としています。しかし仏教の場合、禅宗般若経などを、日蓮宗法華経を、浄土真宗浄土三部経を、真言宗大日経金剛頂経を経典としています。そして、これらの経典の教義はまるっきり違います。

  • 般若経: 世界の全ては実体のない「空」です。「空」を悟りなさい。
  • 法華経: お釈迦さまは永遠に不滅です。お釈迦さまの唯一の教え(=法華経)に従えば誰でも仏になれますよ。
  • 浄土三部経: 阿弥陀さまがみんなを救ってくれます。阿弥陀さまを信じたら極楽浄土に行けますよ。
  • 大日経金剛頂経: 宇宙の本体は大日如来です。人間の中にも大日如来が宿ってますから、修行すれば誰でも仏になれますよ。

これらの経典すべてが、お釈迦さまという一人の人間の言葉だとしたら、お釈迦様の言ってることは支離滅裂です。「自分の教えに従えば仏になれる」と言っておきながら「阿弥陀さまを信じたら極楽浄土に行ける」と言い、「世界の全てに実体はない」と言っておきながら「宇宙の本体は大日如来だ」とか「自分は永遠に不滅だ」とか言っています。わけが分かりません。
じつは、これらの経典は、お釈迦さま自身の言葉ではありません。お釈迦さまは紀元前5世紀ごろの人ですが、般若経法華経浄土三部経は紀元前後から2世紀ごろにかけて成立したものです。お釈迦さまが死んでから500年以上たってますね。大日経金剛頂経にいたってはなんと7世紀ごろの成立です。
つまり、これらの経典は、お釈迦さまの後継者たちがそれぞれ自分なりにお釈迦さまの教えを発展(拡大解釈?)した結果です。「こんなのお釈迦さまの言葉じゃないから仏教じゃないよ!」という人たちもいます。たしかに歴史的事実としてはそうかもしれません。しかし、「歴史的事実」と「宗教的真実」は別問題だと僕は思っています。お釈迦様自身の言葉ではないにしろ、「般若経」はすばらしい経典だと僕は思っています。